| | |
トップページへもどる
| Q1;脳が活性化すると脳波は増えるか? |
| 1929年のHans Berger以来70年を経ているにもかかわらず、いまだにもっとも多い誤解がこれであろう。
脳波は大脳皮質の膨大な数のニューロンネットワークにおける情報処理過程を反映しており、通常はその分散性の高さのために同期することはなく、一定の形で見えることはないが、覚醒時で安静閉眼にしている時のみ、ある程度同期性が高まってα波として観測される。 しかし、なにか情報処理を行うと、とたんに分散性が増大して同期性が低下するために、原則として、すべての波形は減少する。α-attenuationはその典型であり、β波もほとんどの場合減少する。 したがって、脳が活性化すると脳波が増えるとか、α波はもちろん、何かの波形が出てくるということはない。 この点は非常に誤解が多く、たとえばあるホームページに掲載されていた論文の主旨・・・ 鍼灸師と患者の脳波の比較・・・ 鍼灸師と患者の脳波が同期するという論文である。スパイク状のアルファ波という表現も誤解を招くし、そういうことがあり得るかはさておき、何かを考えるなど脳の電気的活性度が高くなるとα波が増大する、という主旨はまったくの誤りである。 この著者は、大脳皮質の電気的活動が高いほどα波が大きく、低くなると小さくなる、というまったく事実とは逆の誤解をしているものと思われる。 |
| Q2;脳が働くとβ波が増えるか? |
| 上記の理由によって、そういうことはなく、ほとんどの場合、β波も減少する。
開眼したり、精神的な負荷がかかった時、α波に変わって「β波が出てきた」ように見えるのは、α波にくらべてその減少の程度がはるかに少ないため残存して、相対的に目立って見えるだけである。 毎日新聞の科学欄に「理系白書」という連載記事があり、TVゲームが子供の脳によい影響を与えない、という主旨の中に次のような内容が掲載されていた・・・ 前頭野の活動レベルの指標となるベータ波は、子供がお手玉遊びをしている時は活発に出るが、TVゲームをするとゼロ近くまで低下する。ベータ波が消えたり、ぼーっとしている時に出るアルファ波並に低下する現象は、老人性痴呆症にもみられる・・・ ある医学博士の解説ということでまとめられている。記者が要約する際に正確さを欠いたのかもしれないが、「β波がぼーっとしている時のα波並に低下する・・・」というのは、まったく正しくないであろう。もしβ波が安静時のα波以上に出現したらえらいことである。とんでもない異常か、さもなくば薬物中毒でも考えなければいけない。
脳波を扱う際、このようにマッピングやスペクトルが示されることが多いが、ほとんどの場合、解析結果だけであって脳波の原波形が示されていない。
(注)この記事の内容は、「ゲーム脳の恐怖」として出版され、話題になった。この本の脳波に関する記述については、“ゲーム脳”の脳波についてで詳述する。 |
| Q3;脳の特定の部位を働かせるとそこに特定の波形が出るか? |
| ある部位が働くと基本的に脳波は減少するのであって、増えたり発現するということはない。
覚醒時には、α波が明らかに後頭〜頭頂部優位に出ること以外に目立った偏在はなく、その他では、β波がやや頭頂〜前頭部に強く見えること、例外的にFmθ波やμリズムが局在することくらいである。 これ以外でもし極端な偏在があったら異常であるか、もしくはアーチファクトの誤認である。 特定の部位に起因する脳波を見るためには、誘発脳波の手段をとらなければならない。 |